【アーカイブぷらす】ふるさとのわらべ唄 <14> 亥の子唄Ⅲ(沖家室)

「炉開き」

 亥の子をつく日は旧暦10月、茶道では「炉開き」が行われます。5月から10月の夏の間は室内で炉を炊くと暑すぎるので「風炉(ふろ)」で湯を沸かします。そして、亥の子の日に室内の炉を開きます。

 ちょうど、5月の新茶がいただける時期でもあるようで、亥の子の日は、茶道の世界でのお正月とも言われます。

 庶民としてはこのあたりにこたつを出したようで。昔の家は掘りごたつですね。
 私の実家は古民家ですので、幼いころは練炭を炊く掘りごたつも現役でした。よく物を落として焦がしましたけど……。

ふるさとのわらべ唄 戎谷和修 <14> 亥の子唄Ⅲ(沖家室・おきかむろ)

 炉開きを亥の子の日に行う風習が各地に残っている。周防大島町沖家室では今年も旧暦十月の亥の日(十一月十三日)に亥の子祭を行う。子どもが少なくなり、祭りとして行われるようになった。正月を迎える祭りといわれ、この日からこたつを出す。

 沖家室には「いちぶ にぶの木」「ござったござった 亥の子様がござった」で始まる大黒舞など、いろいろな唄が歌われている。

 例えば、娘さんがいる家では「飲んでる親父さんが『家の娘をだれそれの嫁にとってくれやー』と問いかけ、『いっちゃんの嫁は誰がよかろ あいちゃんがよかろ それがよかろう 嫁の尻も婿の尻も よう座るように ねっちょけねっちょけ』とやりとりをしながら(亥の子を)ついた。そのときは(祝儀を)はずみよった」ということだ。沖家室ならではのほほえましい光景である。

掲載当時イラスト

 また、女の子も小さな子をむしろにのせて揺すりながら「ごうれんや ごうれんや ごうれんやの下で…」と歌って、男の子と同様にお金をもらって歩いていたという。沖家室独特の行事であろう。旋律も県内では見つからなかった。

 ちなみに、海を隔てた松山市中島町の亥の子唄の一部に『小梅の下で銭三文拾うて…』という「ごうれんや」と同じような歌詞の唄が見つかった。

(周防大島町立三蒲小校長 当時)

歌詞
ごうれんや
ごうれんや
ごうれんやの下で
銭を三文拾うて
一文じゃ柿を買い
二文じゃじょうりを買い
じょうりやのおまん姉が
えっさっさ
豆をいれがらがら
豆をいれがらがら
すっとんとん
(周防大島町沖家室)

[記事 中国新聞防長本社提供 掲載日付:2007年11月4日]

今回の唄の収集場所
ちなみに、山口県はここです。

参考資料動画:11月の炉開きと亥の子餅を、茶の世界から。