トンボさん、トンボさん
夏の暑い日、田んぼは稲穂が伸びてきて、柔らかな緑色が続きます。そんな田んぼに風がサーッと通っていくのが見えます。青い稲穂が波のようにうねるのです。
そのうち、赤とんぼが出てきたなと思ったら、夏だった風がふと変わって、季節が「秋の入口に来たよ」、ってことを伝えます。赤トンボは集団で一匹でなく、群れをなして飛んでることもあって、登場と共に周りの空気が変わるのが、不思議だなぁ、と思っていました。
ふるさとのわらべ唄 戎谷和修 <5>とんぼとり
夏休み、誰もがトンボや蝉(せみ)とりに夢中になる。お盆近くになると、赤トンボが秋の訪れを予感させる。確か精霊トンボと呼んでいたと思う。
失敗ばかりではあったが、子どものころ、私も捕らえようと人差し指を回しながら、止まっているトンボに近づいていっていた。岩国市玖珂町では「トンボ止まれ ハエをうって食わす」と唱える。
萩市見島では「『おんとめん』と言って『きゅっきゅっ(雄と雌)』が連ろうて来ると、すぐに捕りました。そのうちのおんを取っておいちょくんです。おんは色がきれいで、青ですね。めんはちょっと茶色がかってね。見島はおんが少なく、おんをくくるんですよ。そうしたら、めんが来るんです」という話を聞いた。また、「つどうて来たのを「くういが来た」と言っていたがの」という話も聞いた。
多田穂波著『島の子どものあそび』には「田中池でおとりのクジラトンボの胴を木綿糸で縛り、自由に飛べるようにして、短い竿(さお)にくくりつけ、『オッツウメン オッツウメン』と竿を緩やかに左右に動かしながら連呼し、飛びかかってきたトンボを捕まえた」といった意味のことが書かれている。見島では「ドンボ釣り」と言う。(元周防大島町立三蒲小校長)
トンボ止まれ
ハエをうって食わす
(岩国市玖珂町)
おんとめん
くういが来た
(萩市見島)
[記事:中国新聞社提供 掲載日付:2007年8月12日]