元テレビDがSNS動画を観る・8 「公」の目と「私」の目

『この職業を選んだあなたは “クズ” です』

2022年10月の熱海「山木旅館」の庭

 他県とか他局情報は、途中入社の経験豊かなディレクターさんが伝えてくれました。なにかの拍子で、ふと、教えてくれたのはこんなこと…。
「某局に「ディレクター覚書」ってのがあって、一番始めにこんなこと書いてあるんですよ。
 『この職業を選んだあなたは”クズ”です』!」

「…わぁ…分かる!ww」

 …心の中で、激しく頭を縦に振っとる自分自身がいることに気が付きます。本当に、そうだなと思いますね。

「公」の目

 生放送のフロアディレクターをしているとき、両サイドのカメラマンが1、2年目の新人さんだったりしたことがありました。CMからスタジオに降りるカウントを出します。

「CM開けスタジオ降り、10秒前、…8、7、6、5秒前…」

 スタジオに降りると「…重っ」っと、心の中で笑いました。両サイドの空気が無茶苦茶重いんです(笑)緊張とか恐怖感とか、ともかくもろもろのプレッシャーで新人君から発する空気が重い(笑)
 スタジオのカメラ全部アナログですから、ピント来ないとすぐ分かるし。インカムで、2カメ誰を抜け(アップにしろ)とか即座に対応しないといけないし。しかし、生放送中だっちゅーのに…! いやま、その辺のお調子者よりは、数段真面目で好感が持てるんですけどね…(笑)。

 技術の新人君たちの最初、現場に出る時はかなり必死で不安でした。

「…Iさん(技術の長)、ポッケに入れていきたいです」…w
 技術スタッフ、機材習得までが困難。

 そしてあと一つ、こんなこともあるんです。
「俺たちのカメラ、時々、1万人とか10万人の目だったりするんだよな…」
「そう。下手をすると、100万人クラスとか…」


 私がテレビにいた頃は、テレビカメラの質が違ってたように思います。ふと、スタジオカメラのぞき込んで、ん~…と観てみたり。…不思議と何かの圧があるんですよね。たまに、圧に負ける人もいる。

ジャッジするのは視聴者

 テレビカメラは、人の個が持つエネルギーをジャッジできるものでもあったりします。
 テレビは、曲がりなりにも「公」の視点を持っているところで、かつ、それをコントロールする力もあります。

 カメラを通して、その人物を10万人くらいにアピールすると、次のような現象が起こります。

 その人が「本物」か。「中身」がある人か、そうでないかとか。

 ただ、さまざまな方向でジャッジするのは、見ている人の視聴者です。
 見ている人が適当に「洗脳」されていれば、残念ながら情報コントロール側(テレビ側)の情報奴隷となっているので「偽物」ばかりにいったりすることもあります(笑)。

社会構造でとらえるテレビの立ち位置とSNSプラットフォームの立ち位置

 社会構造でとらえれば、農、林業、漁業の…一次産業、続いて二次産業、…製造業、物流、運送業。(ことあたり強くないと、基本的には豊かな社会っていうものは成り立たないものです)さらに、公務。国の省庁を「固い」と批判する姿というのがある。彼らの中に「公僕」を心に決めて、働いている人もいる。
 文化は、こうした経済が安定した上で発展するもの。

 世の中が動いているうえでの、地上波の番組ディレクターです。純粋にやってることと言えば、個の意思で勝手に「情報」を切ったり貼ったりする。
 一部アーティストや経営者のように、ねじ曲がった自己承認欲求とテレビの力が重なると、自分がさも力を持っているように簡単に勘違いできるんです。
 そういう意味では、一社員ごとき、まず、自分は”クズ”だと思わないと、ジャッジがおかしいことになるわけです(笑)
『この職業(テレビディレクター)を選んだあなたは”クズ”です』
 読み方の一つとしては、社会構造上の公的意識を認知せよ、とも言っていると思います。

 現在のyoutube はいわゆる「サービス業」。グローバル企業のプラットフォームに乗っている。
 地上波も「サービス業」、ただ、公共の意味もある。国の許可を得て公共電波を使っている。
 社会全般を言えば、下地にいるようでも上澄み部分には違いはありません。扱っているものは「情報」であり、それで、住まいを作ったり、ご飯食べたりの「物」は生み出せまんからね。

2022年11月の六本木

「私」の目 仕事は楽しく”美しく”

「私の仕事のモットーは ”ラブ & ビューティー”」です。
 …はい? 営業K氏がそう言いました。

 当時の私の机の位置は、局の報道制作・技術とは離れているところにありました。営業とか編成業務というテレビ画面に出てこない人達の席が近い場所だったのです。私の所属している部署は、営業案件も取り扱っていたので、営業さんとも話す機会が多かったので話しやすい。

 通常、報道制作と営業って仲が悪いもんです(どこの局もそうみたいですが)。報道制作は、自分たちが作りたい番組を作るための費用が欲しい。でも、その種(お金)を生み出すのは営業。営業からもって来られる番組の話は、制作側から言わすとピントがずれてることがあって嫌。
 ただ、営業からすると、もうちょっと頭捻って、話題性か視聴率狙える面白い番組作ってからにしろ、みたいな(…元も子もない…笑)
 そういえば、…他の事業所で、費用対効果無視で制作費使ってその局に損失を与えたので、「お前は、二度と制作やるな」と、飛ばされたきたディレクターがいましたけど…(笑)

 で、ともかく、営業・編成事業の社員のみなさんとなると、みんな、雑談でも何か「ひとネタ」を言っていかないと気が済まない。というか、むしろ「そうあれ」という空気感でした。
 それにしても、仕事のモットーで、「ラブ&ビューティー」って、どういうこと?

「…いい仕事は、「美しい」んですよ」

 …なるほどな。
 いい仕事は美しいのはいい。全業種的にも。
「私」の目にも、そんなものが基本になるのが良い。