仕事の話|イラスト制作、頭の中とアクション「高校野球山口大会編」

「無理をしない」のが長続きの秘訣か

 おもえば、新聞挿絵をやり始めて約20年。
 20代も後半に差し掛かった頃の私を、新聞に誘った方はもう他界されたりするのですが……仕事は、延々と続いていくわけです。始めた当初は、そんなに長く付き合う案件だとかけらも思っていませんでした。何年目か、30代になってくらいからの制作上のテーマはとにかくいろいろな意味で「無理をしない」。ただ、振り返るとそれが長く続ける秘訣のような気もします。

絵には、情報量がある

 久しぶりに、紙面の半面を使うイラストの依頼がありました。経験的には3回目くらいですかね。題材は「高校野球」。写真素材から、イラストを制作してくださいとのこと。

 まず、絵の構想が決まるまで、一定の視覚的な情報量というものがあります。写真が送られてきました。その容量が、私の基準に足りなかったので、「もっと資料写真をください」とお願いしました。この時の指定は、箇条書きにしました。

・バットを構えているところのショット
・打つところの正面からのショット
・走っているところ
・熱い守備がわかる感じのショット
・ピッチャーが投げるところのショットをもう少し
・ベンチの選手のゲームの反応が分かるもの

思い出す「夏の日」

 私の30代は、朝日系の地方局のテレビの中の人でした。
 朝日系というと、地方大会から中継が入ります。そのため、大会のアナウンスブースに1度ばかしでしたが、フロアディレクターとしていたこともあります。
 カメラマンとか技術の人たちは日焼けが大変で、基本的に日焼け止めに効力がなく真っ黒。それで、思い切り肌の弱かった同僚は「……冬か?」くらいの勢いで、長袖とタオルで日差しをガードしていました。
 あと、裏方も高校野球経験者も多かったので、うんちくを聞きながら、冷房の効いた局内で中継を見たりもしていました。非常に楽しいんですね……内容は一切覚えてないんですけど……(笑)。
という、私の青春時代的な夏の思い出と空気を思い出し……。

 で、絵のテーマは、「熱さと全力感と動き」

「高校野球」イラスト制作

 編集部ではカメラマンさんに上記の項目の熱い写真をセレクトしてもらっておりまして、これが「ザ・高校野球」って感じで熱くてワクワク。
 ただ、資料写真ベースのコラージュなので、並べただけでは、総花的で説得力がないなと思いました。実は、この時点の私の頭だけだと、判断がつかないんです。それで、こういう時の答えはどこから探しているかというと、素材の中に答えが存在します。写真をとにかく見続ける。

 ホイッとアイデアがでるのは、私の場合には、自分にエネルギーが満ちてやたらリラックスしているそんな時で、浮かんだアイデアはつかさず、筆を走らせときます。

 そのアイデアを、繰り返します。あと、それぞれの動きがなぜ「動いて見えるのか」というのと、体の構造の研究と理解を繰り返します。

 当初の「思い込み」が、このあたりで排除され、完成に向かう答えが見えてきます。

「あぁ、やっぱり大画面は、大画面で考えないとダメね」……みたいな。紙面を完成サイズにして、このラフで、全体構想が整いました。

そうして、下絵へ。少しずつ進めながら、足りない部分を補います。

そうして完成。筆ペン、ペン、水彩。今時珍しいかもしれませんが、アナログで描いています。

 実は、この完成イラストを取り込んでデータ納品した後、帰郷していたのですが、良し悪しがジャッジが付かないので、原画を持ち帰っていつでも訂正できるよう用意していました……(笑)。

 お返事が移動途中にメールにあり、「夏の甲子園のイメージ通りで、防長本社編集部でも感動の声が上がっております」。「おおお~っ」て心の中で、初回で点が入ったくらいの勢いだったのは、私の方でした(笑)。

 それで7月8日㈮に新聞掲載と。なんか、ざっくりした感じで良かったかな。あと、通常と変わったスタイルで、楽しかったです。
 そうして、今年も熱い戦いが始まるわけです! ちょっとだけでも、参戦できて光栄です!

 ちなみに同日本紙では、通常連載の「ふるさとのわらべ唄」571回目もあり、そちらはではこんな感じです。